大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(う)2670号 判決

被告人 吉田憲司

〔抄 録〕

刑法第百八条にいわゆる焼燬とは、犯人の点じた火がその媒介物を離れ、その目的物たる建造物等に燃え移り、独立してその燃焼を継続しうる状態に達することを指称するのであつて、その目的物が火力のため重要部分を焼失し、その効用を失うことを必要とするものではない。原判決の適法に認定するところによれば、被告人は、現に人の住居に使用する原判示家屋南側の雨戸などに石油を振りかけたうえ、付近にあつた右バケツに新聞紙二、三枚を丸めたものと藁を入れ、これを同家屋南側の縁先に接して立てかけ、マツチで点火して右新聞紙に火をつけ、更にその上にすだれを置いて放火し、よつて右家屋南側の土台木のうち約〇、〇三四平方米を深度約三粍ないし約七粍にわたつて炭化させたというのである。右炭化の範囲、状況から観察すると、被告人の点じた火が前記新聞紙二、三枚を丸めたもの、藁、すだれ等の媒介物を離れて右家屋の一部である土台木に燃え移り、独立してその燃焼を継続しうる状態に達したことが窺われるから、原判決が本件放火が焼燬の結果を発生し、したがつて既遂に達したものと判断したのは正当である。

(坂間 栗田 有路)

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